バーチャルオフィスで東京に本店を置くとき|見落とすと7万5,000円損する順番
バーチャルオフィスの住所を本店として会社設立の登記をすることはできます。違法でもありません。ただし東京では、順番を間違えると7万5,000円損する落とし穴があります。
この記事は、東京都内でバーチャルオフィスを使って会社設立をしようとしている方に向けて書いています。登記そのものの話より、その前後で気をつけることを中心に並べます。とくに、本店を置く区市町村の特定創業支援等事業との関係は知らないと取り返しがつかないので、最初に書きます。
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01バーチャルオフィスの住所で登記はできます

まず前提として、バーチャルオフィスの住所を会社の本店所在地として登記することはできます。会社法に「本店は実際に事業を行う場所でなければならない」という定めはありません。
東京はバーチャルオフィスの選択肢が非常に多い土地です。都心の一等地の住所を月額数千円から借りられます。自宅の住所を公開したくない方や、対外的な見え方を整えたい方が使っています。
定款に書く本店の所在地は、最小行政区画までで構いません。東京の23区なら「東京都渋谷区」まで、多摩地域なら「東京都八王子市」までです。登記申請書には番地や建物名まで書くので、バーチャルオフィスから提供される正式な住所表記を事前に確かめてください。
気をつけたいのが、同じ住所に同じ商号の会社がないかです。バーチャルオフィスは同じ住所に多くの会社が登記されているので、商号が重なる可能性が高くなります。会社設立の前に必ず調べてください。
郵便物の扱いも確かめてください。登記関係の書類や役所からの通知が届きます。転送のサービスがあるか、頻度はどれくらいかを契約の前に確かめておいてください。
会社設立の代行に相談するときは、バーチャルオフィスを使うことを最初に伝えてください。本店の区が決まらないと、管轄の登記所も届出先も決まりません。

出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式(株式会社設立登記)」(2026年9月時点)
02いちばん大きな落とし穴は、区の証明書です

本店を置く区市町村の特定創業支援等事業の証明書があると、会社設立の登録免許税が半額になります。株式会社なら15万円が7万5,000円に、合同会社なら6万円が3万円になります。
この証明書は、本店を置く区市町村が交付したものでなければ使えません。渋谷区の公式ページにも、渋谷区が交付する証明書をもって他の市町村で創業・設立する場合はこの特例を受けられない、という趣旨の記載があります。
新宿区の公式ページにも「証明書を発行する時点において新宿区外で事業を始める予定の方」「区外へ移転しているもしくは移転予定の方」は対象外という記載があります。
バーチャルオフィスを使うと、住んでいる区と本店を置く区が違うことが普通に起きます。自宅の近くの区で創業セミナーを受けて、本店は都心のバーチャルオフィスに置く。この流れが、いちばんありがちな事故です。
正しい順番は、先にバーチャルオフィスを決めて、その住所がある区の創業支援を受けることです。受講に1か月以上かかる区が多いので、会社設立の1か月半から2か月前には住所を決めておく必要があります。
会社設立の代行に相談するときも、この制度を使うつもりであることと、バーチャルオフィスを使うことの両方を伝えてください。日程をそこから逆算して組んでもらえます。

出典:渋谷区「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書について」(2026年9月時点)
03区によって創業支援の内容が違います

バーチャルオフィスの区を選ぶとき、その区の創業支援の内容も見てみてください。受講の形も証明書の出方も、区によってかなり違います。
港区は、産業振興課の窓口で即日発行です。対象は「港区でこれから創業しようとする方または港区で創業して1年未満の方」で、証明書は各事業の終了から1年間申請でき、発行は原則1回限りとされています。
渋谷区は、スマート申請(オンライン)のみで、交付まで1週間ほどかかります。受講はセミナー形式で1か月以上かつ4回(交流会を含め合計5日間)です。
新宿区は動画セミナーを随時受け付けていて、原則として修了まで約1か月(全4回)です。申請できるのは本人のみで、代理はできません。
千代田区は、区役所のワンストップ相談窓口で中小企業診断士が3名常駐していて、1か月以上かつ4回以上の支援を受けると要件を満たします。
会社設立の代行に相談するときに、「この区で創業支援を受けたいのですが、日程は間に合いますか」と聞いてみてください。地元で仕事をしている事務所なら、その区の窓口の実情を知っていることがあります。
つまり、在職中で時間が取りにくいなら動画セミナーがある区、急いでいるなら即日発行の区というように、自分の状況に合わせて選ぶこともできます。バーチャルオフィスの区を決めるときの材料のひとつになります。

出典:港区立産業振興センター「特定創業支援等事業による証明書の発行について」(2026年9月時点)
04許認可がある事業では使えないことがあります

登記そのものはできても、許認可の要件を満たせないことがあります。これはバーチャルオフィスを使うときの大きな注意点です。
宅地建物取引業では、独立した事務所の形が求められます。他の法人と同一の住所を本店所在地とすることが認められていないという説明もあります。バーチャルオフィスでは要件を満たせません。
建設業の許可申請でも、実際に事業を営む営業所の実態が確かめられます。写真の提出を求められることもあります。
人材派遣業や有料職業紹介事業でも、事務所の面積や設備の要件があります。飲食業や食品製造業では、そもそも施設の基準があります。
つまり、許認可が必要な事業なら、会社設立の前に要件を確かめる必要があります。会社を作ってから許可が下りないと分かると、本店の移転登記からやり直すことになります。
会社設立の代行を選ぶときも、許認可がある事業ならその点を最初に伝えてください。代行の側は本店の住所を「登記できるかどうか」で見ますが、許認可の要件まで見てくれるとは限りません。
許認可を扱うのは行政書士です。会社設立の相談を行政書士事務所にすると、許認可の要件を踏まえた定款と本店の設計をしてもらえます。多摩地域にも23区にも、許認可を扱う事務所があります。

出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式(株式会社設立登記)」(2026年9月時点)
05法人口座の開設で説明を求められることがあります

会社設立の登記が終わったら、法人口座を開きます。このとき、バーチャルオフィスを本店にしていると説明を求められることがあります。
東京の税理士法人の公式サイトには、「近年の東京の金融機関の傾向としては、事業目的や資本金、本店所在地を重視し、場合によっては口座開設を断る事例も出ています」という指摘があります。
断られると決まっているわけではありません。事業の実態が伝われば問題になることは少なくなります。説明の材料として、取引先との契約書、請求書、ウェブサイト、事業の写真などを用意しておいてください。
定款の事業目的も見られます。関係のない事業がたくさん並んでいると「何をする会社か分からない」と見られることがあります。会社設立の時点で、目的の書き方に気を配る意味はここにもあります。
資本金の額も見られます。極端に小さいと事業の実態を疑われることがあります。会社設立の費用を下げるために資本金を小さくした場合、他の資料で実態を示す必要が出てきます。
口座を開きたい金融機関に、会社設立の前に「必要な書類は何ですか」と聞いておくと二度手間が減ります。バーチャルオフィスを使う予定であることも、そのときに伝えておいてください。

出典:帝国データバンク「2025年「新設法人」動向調査」(2026年9月時点)
06本店の区で、手続きの相手が全部決まります

バーチャルオフィスの住所を本店にすると、その区が会社の「所在地」になります。つまり、その区を基準に手続きの相手が決まります。
設立登記の申請先は、本店の区市を管轄する登記所です。東京では23の登記所が商業・法人登記を扱っていて、庁の名前と管轄の区が一致しない庁があります。城南出張所は大田区、城北出張所は足立区と葛飾区、渋谷出張所は渋谷区と目黒区です。
23区の法人事業税・法人都民税の課税事務は9つの都税事務所が分担しています。本店の区にある都税事務所が所管とは限りません。大田区なら品川都税事務所、江東区なら中央都税事務所です。
社会保険の届出先である年金事務所も本店の区で決まります。杉並区・中野区に本店を置く会社の健康保険・厚生年金保険の届出先は新宿年金事務所です。
人を雇う場合は労働基準監督署とハローワークも関わります。この4つは、それぞれ区の分け方が違います。バーチャルオフィスの区を決めた時点で、この4つを書き出しておくと後で慌てません。
法人都民税の均等割は、23区内なら区にかかわらず同じです。資本金等の額が1,000万円以下・従業者数50人以下なら年額7万円からで、赤字でもかかります。

出典:東京法務局「不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧」(2026年9月時点)
07移転すると、また手続きが発生します

バーチャルオフィスは解約しやすいのが利点ですが、本店を移転すると変更登記が必要になります。登録免許税もかかります。
東京では、区をまたぐと管轄の登記所も変わることが多くなります。管轄が変わる移転は、変わらない移転より手続きが重くなります。
届出先も変わります。都税事務所、年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク。これらは区の分け方が違うので、どこが変わってどこが変わらないかも組み合わせで違ってきます。
そして、特定創業支援等事業の証明書は本店を置く区市町村のものでなければ使えません。会社設立の時点で証明書を使って登録免許税を軽減した後に移転しても、すでに受けた軽減が取り消されることはありませんが、会社設立の前に移転の予定があるなら、順番を考える必要があります。
取引先への案内、名刺やウェブサイトの修正、法人口座の住所変更なども発生します。費用より手間のほうが大きいことも少なくありません。
会社設立の代行を扱う事務所は、本店移転の登記も扱っています。最初の会社設立で一度付き合っておけば、移転のときも同じ事務所に頼めます。そのときの費用の目安も、会社設立の相談のときに聞いておくとよいでしょう。
会社設立の時点で、しばらく変えないで済む住所を選んでおくのがいちばん安く済みます。バーチャルオフィスを選ぶときも、料金だけでなく事業者の安定性を見ておいてください。

出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(2026年9月時点)
08自宅を本店にする場合との比較

バーチャルオフィスを使うか、自宅を本店にするか。この判断は、住所の公開をどう考えるかで決まります。
自宅を本店にすると費用はかかりませんが、住所が登記事項として公開されます。登記事項証明書は誰でも取れるので、自宅の住所が知られることになります。
代表取締役の住所を登記事項証明書に表示しない措置を申し出る制度があります。東京の司法書士事務所には、この申出に対応していて追加報酬を明示しているところがあります。ただし、本店で会社名宛の配達証明付き書留を受け取れることなどの条件があるので、バーチャルオフィスの場合は条件を満たせるかを確かめてください。
賃貸物件に住んでいる場合は、契約上そこを本店にできるかも確かめる必要があります。事務所としての利用を禁じている契約もあります。
費用面では、バーチャルオフィスは月額がかかります。年間で数万円から十数万円になるので、会社を持ち続けるあいだ発生する固定費として見ておいてください。
会社設立の代行に相談すると、この判断についても実例を交えて話してもらえることがあります。東京では自宅を本店にする方もバーチャルオフィスを使う方も多いので、代行の側にも両方の事例が蓄積されています。
どちらの場合も、本店を置く区市町村の特定創業支援等事業の証明書はその区で取る必要があります。自宅なら自宅の区、バーチャルオフィスなら借りた住所の区です。

出典:法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」(2026年9月時点)
09まとめ

バーチャルオフィスの住所で会社設立の登記はできます。ただし、許認可がある事業では要件を満たせないことがあり、法人口座の開設で事業の実態の説明を求められることがあります。
いちばん大きな落とし穴が、特定創業支援等事業の証明書です。この証明書は本店を置く区市町村のものでなければ使えません。住んでいる区で受講して本店を別の区に置くと、登録免許税の軽減を取り逃がします。株式会社なら7万5,000円、合同会社なら3万円の話です。
順番としては、先にバーチャルオフィスを決めて、その住所がある区の創業支援を受けてください。受講に1か月以上かかる区が多いので、会社設立の1か月半から2か月前には住所を決めておく必要があります。

出典:中小企業庁「会社設立時の登録免許税の軽減について」(2026年9月時点)
この記事でいちばん伝えたいのは順番です。バーチャルオフィスを決める → その住所がある区の創業支援を受ける → 証明書を取る → 登記する。この順番でないと、登録免許税の軽減は使えません。
自宅の近くの区で創業セミナーを受けて、本店は都心のバーチャルオフィスに置く。これをやると軽減が使えません。東京はバーチャルオフィスの選択肢が多いぶん、この事故が起きやすい土地です。
バーチャルオフィスを選ぶときは、料金や住所の見え方だけでなく、その区でどんな創業支援が受けられるかも見てみてください。会社設立の費用が7万5,000円変わる話です。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
掲載順に優劣の意味はありません。並び順はページごとに変えており、順位付けではありません。いずれも当サイトが実際に検索してURLの存在を確認したサイトです(確認時点の情報のため、移転・終了している場合があります)。
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